生首を提げて崖下まで戻った。
 腕に伝わる重みが俺とルメイの口を重くさせたが、即席の箒で地を掃いていたフィアが手を振って笑顔で迎えてくれた。肝が太いのか図太いのか、フィアは俺たちが腕にぶら下げている物を見ても動じた様子はなく、陽気な笑みが少し深みを増したように見えるだけだ。
「足跡は消しておいたよ。帰りは河原を通って行こう」
 フィアは木の枝に細い粗朶を結わい付けた道具で、森から崖下まで続く地面を掃き清めてきたようだ。


「これ作ったよ」
 フィアが崖下の岩に置いてあった袋を手渡してきた。
「もう出来たのか。仕事が早いな」
 さっそく袋を手にしたルメイが品定めをしている。帆布を折りたたんで二辺を縫い合わせ、細長い袋に仕立ててある。縫い糸の目も詰まっていて、これなら頑丈な運搬具になりそうだ。
「裁縫は小さい頃から習ってたの」
 フィアは少し照れているようで、後ろ手を組んで体を傾けている。
「さっそく入れてみよう」
 ルメイが釣って来た魚を見せるかのようにサッコの首を持ち上げて見せた。


 フィアが袋の上部を手繰って押さえている間に、ルメイが生首を袋の中に落とし込んだ。死に顔が見えなくなるとほっとする。フィアが袋の上側を絞って折り返し、根元の辺りを紐できつく縛る。そこに出来た輪に肩紐を通すと、ルメイはさっそく首に回して提げてみている。そのままだと肩紐が長過ぎで、歩く時に荷物が脚に当たって動きづらそうだ。フィアがルメイの体側に取りついて肩紐の結び目をずらしている。
 同じ要領でオロンゾの首も袋に仕舞い込み、二つの袋の肩紐を襷がけにしたルメイが、自由になる両手を開いて見せながら、どう? と声をかけてきた。


 俺は目を細め、ルメイをじっと見つめた。
「縫い糸の縁取りが綺麗だな」
 ルメイがちょっと首を傾けてみせる。
「御洒落さんね」とフィアが頷きながら言った。
 ルメイは満足そうに「ふむ」と呟くと、重さを確かめるように両肩を上下させてから試すように歩いている。
「みんな振り返って見るわよ」
 フィアが感じ入ったように言うと、ルメイの足取りも軽くなる。
「まあ生首なんだがな」
 俺が冷かすと、ルメイの上機嫌がすっと無表情になった。
「ピューの死体を降ろそう」
 そう言って重い袋を丁寧に地面に置いている。


 フィアは本当に仕事が丁寧だ。
 ルメイと二人で崖を登ると、足場の縁にピューが横たわっているのが見えた。ロープの先に二つ輪を作ってピューの脚を通し、さらに脇の下を何周かさせて縛り付けてある。首の傷には布きれを巻いてこれ以上血がこぼれないようにしてあり、傍から見るとピューがまだ生きていて、ロープを使って崖を降りようとしているかのようだ。
「綺麗に掃除してあるな」
 ほら穴の入口から中に首を入れ、フィアの仕事を確かめたルメイが感心している。


 縛られたピュー越しに崖下を見下ろした。
 身長の三倍くらいしかない崖だが、ここから死体を投げ出したらひどい有様になるだろう。俺たちを殺すのに忍び寄って来たのだからピューがどうなろうと構わないが、飛び散った血肉はまた手間をかけて掃除しなければならない。
 身を反らせて崖の真下を覗き込んでいると、ピューの手が俺の足首を叩いた。
 ヒュウと喉が鳴り、崖から飛びすさる。ピューの顔を見るが、どう見ても死人だ。振り向くとロープの端を持ったルメイがほら穴の中に入っていくところで、引っ張られた腕が動いただけだ。俺が鼻息を荒くして目を吊り上げているのを、振り向いたルメイが首を傾げて見ている。


「ゆっくり頼む」
 ほら穴の中で寝そべるようにして両脚をつっぱらせたルメイが、少しずつロープを繰り出してくる。俺は縛られたピューの死体を崖から押し出し、ロープが岩に当たる場所に樹皮を剥いた枝を挟めて固定した。張りつめたロープが繰り出されるたびに、ズリ、ズリという乾いた音がする。死体が完全に崖の向こう側に出ると、ピューが宙吊りになって回転し始めた。このまま地面まで下ろしていったとして、着地した時に倒れて頭を岩にぶつけるかもしれない。岩場にぶち撒けられたピューの脳味噌を掃除するのは御免だ。


「ちょっと待って」
 ほとんど仰向けになって足を踏ん張っているルメイに声をかけ、回り込んだ先で崖を降りた。崖下で両手を上げ、回るピューの爪先を掴んで止める。世の中には色んな仕事があるものだ。
「よし、いいぞ。ゆっくりな!」
 崖上に向かって叫ぶと、ピューが少しずつ降りてきた。そのまま抱えるようにして着地させる。首の傷に巻いてある布きれは血を吸ってじっとりとしており、金臭い血の匂いがぷんと鼻につく。


 ピューの縄目を解いていると、ルメイが崖を降りて来た。ピューは痩せ細っていて背負えば一人でも運べそうだが、体に血がべったりと付いてしまうのでルメイと二人で運ぶことにした。サッコやオロンゾと比べたら軽いものだ。
 しかしこの軽い男が厄介だったのだ。俺たちのわずかな足跡を追ってこんな所まで山賊たちを導いて来たのだから。当たり前の話だが、腕力のある者だけが良い仕事をするとは限らない。ピューは小柄ながら優れた追跡人だった。ウィリーのパーティーにいた釣り役のマシューも、体は小さいながら長い距離を走り通しに走る。そして我らがフィアは、野営術に長けた華奢な女罠師だ。


 森の中でピューの死体を埋めた。
 ピューのお気に召すかは知らないが、旅の仲間だったサッコとオロンゾが横たわる同じ穴に収められた。埋め戻した穴の周囲を木の枝で均していると、枯葉を拾って来たルメイがそれを辺りに撒いた。橙色、黄色、焦げ茶色、様々な色をした枯葉はカラカラに乾いていて羽毛のように軽く、シャラシャラという音をさせながら思い思いに宙を舞って地に降り注いだ。樹影の濃い林の中に午前の陽が綾なしているのも手伝って、何かの儀式のようにも見える。


 花嫁の通り道に花びらを撒いていた長兄の結婚式を思い出した。清々しく晴れた日の教会で、楽隊が賑やかに行進曲を演奏していた。俺が家を飛び出して王都へ行く少し前の出来事で、もはやぼんやりとした記憶の断片になってしまった。
 村人を大勢呼んで、料理や酒を盛大に振る舞った。大皿に盛られた肉団子を腹いっぱい食べたものだが、その思い出が現実の自分に跳ね返ってくる。まだ昼まで間があるにもかかわらず、空腹を感じている。そういえば今朝はビスケットを口にしただけで、相当な重労働をこなしている。大皿に盛られた食い切れないほどの食べ物とは、なんという贅沢であろうか。荒野ではそれが身に染みる。


 死体を埋めた場所をルメイが矯めつ眇めつ眺めている。
 山賊たちを埋めた穴は跡形もなく消し去ってしまうのだから、俺たちだけの秘密になる。世話になっている黒鹿亭の女将ハンナのために、死体を埋めた場所に最後の一瞥をくれることにした。
 ハンナ、あんたの弟、怪力のサッコは誰もいない森の奥で静かに眠っている。案外いい場所だぜ。墓標がないのは寂しいが、その代りに弟はもう誰も傷つけやしない。こういう話をあんたにしてやれたら、そしてそれをあんたが納得してくれたら俺も溜飲がさがるのだが、おそらく話せないだろう。永遠の秘密だ。俺はこの何気ない森の景色を、一生忘れないだろう。


 地面からすうっと窓が立ち上がってきた。
 艶々とした黒檀の窓枠をもつ美しい窓が、なかば地面に埋まる様にして浮き上がっている。縦長の瀟洒な窓で、陽当たりの良い御屋敷を連想させる。長方形をした窓の中には荒れ狂う海が映っている。黒々とした波濤に船首をめり込ませるようにして進む三本マストの船が見える。船首像が掻き分けた波が白く泡立ち、それを強風がさらっていく。誰の窓なのだろう。足元には死人しかいないのだが、ある種の窓は時と場所を変えながら人の心を映し続けるようだ。
 俺は目の前を手で拭くような仕草をした。腕が通り過ぎた跡には、ただ枯葉散る林がひろがっているのみだ。


 崖下に戻ると、すっかり準備を整えたフィアが岩に腰を下ろして俺たちを待っていた。
「いつでも行けるよ」
 涼しげな顔で立ち上がったフィアの前に、天秤に吊るした虹羽根や背嚢などが並べてある。出発までには相当難儀すると思っていたが、ルメイとフィアのお蔭で首尾よくいった。俺は機嫌が良くなってフィアをからかいたくなった。
「それでは姫様、道中宜しくお願いします」
 そう言って拳を胸につけると、フィアは余裕の笑みを浮かべた。片足を曲げ、見えないスカートを摘まんで広げてみせる。


「此の上ともよしなに」
 フィアの返礼が余りにも自然で、俺は一本取られたような顔をしている。付け焼刃ではない。フィアは本当にこんな風に挨拶をしていたのだ。フリルのついた綺麗なドレスを着た娘が見える気がする。フィアはすぐに姿勢を戻し、照れ臭そうに「こんなの久し振り」と言って笑った。苦労を知らずに育った幼い頃のフィアが一瞬だけ垣間見えた気がする。
「出発するぞ!」
 ルメイが俺とフィアを交互に見ながら可笑しそうに笑った。俺たちはこうして、三人とも笑えるのだ。それは自分の家でくつろぎながら交わすような笑顔ではなかったかもしれないが、荒野では十分だ。


 ルメイが生首の納まった袋を二つ、肩から提げて持った。虹羽根をぶら下げた天秤は二本あるが、俺とルメイが両肩に担いで二人がかりで運ぶことにした。俺が手前で、ルメイが後ろ、二人で荷を運ぶ様はまるで普請場の人足のようだ。フィアは自分の背嚢だけを持ち、俺たちの十歩ほど前を警戒しつつ歩く。
 フィアは荷物の軽さを申し訳なさそうにしたが、哨戒役は絶対に身軽でなければならない。フィアが危険を察知し損ねたらそのままパーティーの危機につながる。


 せっかく掃き清めた道に足跡を残さないよう、俺たちは川沿いの砂利道を歩いた。
 途中で振り向くと、狩場の森とほら穴のある岩場が見えた。俺の目には様々なことが刻み込まれて忘れもしない景色になっているが、たまたま通りかかった別のパーティーからは何の変哲もない場所に見えるだろう。街から離れて野辺をさすらい、日時の感覚が鈍くなっているが、この森に辿り付いて三日目の朝になるのだ。思えばイシリオンが言った通りになった。


 森のとば口まで来ると、フィアがちらっと俺たちを振り返ってから先に走り出した。そうして次々と木々の幹に視線を走らせている。何かを探しているようだ。
「これを見て」
 フィアが俺たちを手で招き寄せた。俺とルメイは肩から荷を外して地面に置くと、フィアの示す木の所へ走った。両手を回しても届かないほど太いブナの樹皮に、十字に傷がつけてある。
「なんだいこれは?」
 首を突きだして傷を見ているルメイを尻目に、フィアは数歩ひいて方向を見定めている。


「こっち」
 フィアが進んでいく先に別のブナの木があり、その背後に枯葉の山が見えた。俺とルメイは思わずあっと叫んだ。
「オロンゾたちの荷物だな」とルメイが言った。
 フィアは既に枯葉を手で払っている。その下から果たして背嚢が三つ出て来た。
「手間をかけて隠す時間は無かった筈なのよ」
 フィアが手始めに一番小さな背嚢の口を開け、中身を白日の下に晒していった。山賊の手荷物となると、妙に気持ちが昂る。


 厚紙に包まれた塩漬け肉が一切れ、小麦粉らしき粉が入った袋が一つ。それに何種類もの小刀と砥石とロープの束。地図らしきものと、刺激臭のする粉が入っている小袋が幾つか。そっと匂いを嗅いだフィアは顔をしかめ、これ以上関わり合いになりたくないといった感じで地面に投げた。
 フィアは掌に収まるほどの木片に興味を持ち、何度か引っくり返しながら眺めている。それが木彫りの蜥蜴である事に気付くと、ぽいと投げ捨てて指先を腿のあたりに擦りつけた。この荷物はピューのものだろう。


 フィアは小さな背嚢を木の根元に立てかけるようにして置くと、隣にあった大きな背嚢を持ち上げた。ずっしりとした重さがあるようだ。一番上の方に詰めてあった厚手の革袋を開くと、銀貨と銅貨がみっしりと詰まっている。フィアが俺に手渡すので、受け取ってルメイにパスする。革袋を掴んで首を捻っているルメイに、数えてくれ、と小声で頼む。
 粗朶の束が少々と、火打石の類もみえる。薄手の毛布は折りたたんで仕切り板のように詰め込まれている。呪いの森まで分け入るには随分と軽装に思えるが、仲間と荷物を失いながらの旅だった筈だ。少なくとも他にあと三人はいたのだ。持ちきれない荷物は隠すか捨てるかして、大急ぎの追跡行をしていたのに違いない。


 底の方から掻き分けるようにして荷物を出していたフィアが、あった! と言った。もはやそれ以外の物には興味を失くしたかのように荷物から手を放し、一枚の厚紙を手に持ってそっと広げている。
 フィアの似顔絵だ。
 どうすればこんなに似せて描けるのか判らないが、実によく描けている。衣服は省いてざっとした襟のラインと鎖骨だけ描かれているが、肩までつく程度に伸ばした髪と涼しげな顔立ちが緻密な筆運びで描かれている。
「西の回廊に飾ってあった絵を元に描いたんだわ」
 フィアがじっと絵を見ながら言う。西の回廊というのは、デルティス城のことを言うのだろう。この人相書きには参考にした元の絵があったのだ。
「こういうことを指図できるのは一人しかいない」
 フィアが悔しそうに唇を噛んだ。


「ここに押してある印章を見てくれ」
 横から手を出して絵の隅を指差した。地面に硬貨を並べていたルメイが立ち上がり、俺が示した辺りを覗き込んでいる。
「少し擦り切れてるが、盾の紋章だ。盾の中に描かれているのは王冠と蛇と匕首。この印が押せるのは薬師卿ただ一人だよ」
 フィアが眉根を寄せ、「やっぱりバイロン卿なのね」と吐き出すように言った。
「宮中の文書は持ち出し厳禁なのに、こんな所でお目にかかるとはな」
 まじまじと人相書きを見ていたルメイが呟く。
「さすがにこういう物が無いと探せないから、バイロン卿が秘密裏に作って配ってるんだろう。そしてゴメリーがオロンゾに託した……」


 オロンゾたちの荷物を前にして、分捕り品を検める山賊のような気持ちになっているのに気付いた。ゆっくり品定めしている場合ではない。
「取り敢えず、持って行く物を決めよう。どこで足がつくか判らないから、本当に最低限の物だけだ。残りは埋めて隠す」
 フィアはいまだ自分の似顔絵をじっと見つめている。地面に硬貨を置いて数えていたルメイがジャラジャラと音をさせてコインを袋に戻した。
「金貨七枚、銀貨二十八枚、銅貨十二枚。おそらく連中の全財産だな。食い物と金は頂こう。捨てるのは勿体ない」 


 ルメイは金の入った袋を俺に託し、肌着に縫い付けるようにして持っている手帳に収入を書き入れている。俺はオロンゾ達の金をパーティー用の財布に移すと、使い易そうな厚手の革袋を敢えて地面に捨てた。色違いの当て縫いがしてあり、見る者が見れば出所が判ってしまうだろう。
 手帳をしまったルメイは、体を傾けて自分の背嚢を足元に下ろし、食料の袋を詰め込んだ。重くなった背嚢をぽんぽんと叩いて満足そうな顔をしている。


「フィア、その絵はどうする?」
 似顔絵を持ったまま、フィアは何事か熟考するように宙を睨んでいる。
「焚き付けにでもするかい?」
 背嚢から出したシャベルでざくっと地を突いたルメイが、取っ手に両手を乗せてフィアを見ている。
「この絵は持ってようと思うの」
 フィアが宙を見ながら言葉を返した。顔をしかめたルメイが、危なくない? と間髪入れずにやり返した。
「事情を知らない人にはただの似顔絵にしか見えないわ。事情を知ってる人がわたしの荷物を検める機会があるなら、いずれにせよわたしは終わってる」
 ルメイが両手を開いて、そりゃまあそうだが、と呟く。


「わたしはバイロン卿につけ狙われてるけど、公には手配されてないの。賞金首にするには罪状がないし、衛兵が捕えたりしたら、その後どうなったか皆気にするわ。自分が何をしようとしているか、市井の人達に見透かされるのを恐れてるんだと思う」
 フィアは丁寧に人相書きを折りたたむと、両手でぎゅっと持って目を上げた。
「でもこれが証拠よ」
 フィアは唇を引き結び、ゆっくりと肩で息をしている。
「わたしが今まで死なずにいたのは、兄さんたちの無実を世に知らしめるためなの。それだけがわたしを突き動かしてるの」
 なんという辛い生き様だろう。俺は何も言い返す気になれず、そっと俯いた。


「政に巻き込まれて父が命を落とすというならまだ判る。父はそういう立場にいたのだから。でも兄さんたちまで手にかけるなんて、許せない」
 フィアは宙を睨みつけ、言葉を紡ぐようにして吐き出している。オロンゾの死に際の目付きを思い出した。フィアが握り締めている人相書きは、そう遠くない過去にバイロン卿も手に触れた筈だ。そう思えば感情も昂ぶるだろう。フィアは人相書きを胸元に仕舞い込むと、大きく一つ息を吐いた。
「ごめん。セネカとルメイには関係のない話ね」
「フィアは仲間なんだから、関係ないってことはないさ。これからは一人じゃないんだから、気持ちを大きくしてもらって構わないぞ」
 フィアの肩に手を乗せて大きくひとつ頷いてみせる。シャベルに手を乗せたルメイも頷いている。フィアは目を細め、ありがとう、と囁いた。


「それじゃ、残りは埋めよう」
 ルメイが少し離れた位置に穴を掘り始めたので、俺も背嚢からシャベルを出して手伝った。土が柔らかくて助かる。フィアはオロンゾ達の荷物に最後の検分をしている。
 ルメイがふとフィアの方を見て手を止めた。シャベルを宙に浮かせたまま、眉根を寄せている。つられて俺もそちらを見る。フィアは分厚い紙束のような物を手に持っていて、絶句している様子だ。いったい何を見つけたのだろう。
 フィアが俺とルメイがいる場所まで歩いてきて、紙をぱらぱらとめくって見せた。同じ様式で書かれた伝票のようなもので、あちこち赤茶色に汚れている。それが何か気づいた瞬間に、暗澹たる気持ちになって思わず顔を歪めた。


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